11月19日、mashup studioにて (一社)日本医療デザインセンターによる「医療デザインサミット2022」を開催。「Collective Impact(※)による医療デザインの社会実装」の宣言の基に活動を推進してきた1年間は、未だ社会を変革するには至らないとはいえ、ひとつひとつのアイディアがかたちになり、医療デザインの可能性が全国各地で芽吹き始めたようです。
そもそも「医療デザイン」とは何か?—
「すべての人が安心して豊かに生きることを目的とした建築(設備)・製品・情報などの企画および設計のことであり、またそれを実現するためのプロセス(過程)」と、当法人は定義します。
コロナ禍の病床ひっ迫、コロナワクチンへの賛否。コロナの有無に関わらず、世界規模では「地球環境への警笛」、日本では「超高齢化社会」、地域では「適切な医療が受けられない人の増加、医師不足」等々。これらの課題は医療・医学の知識や技術だけでは解決できないことですが、一方で、医療の領域でイノベーションを起こすためには、『大規模な予算』や『ハイテクノロジー』が必要とは限りません。発想次第、創意工夫次第で、今あるモノや『ローテク』でもイノベーションを起こせる可能性がある、と桑畑さん。
それにしても制約の多い医療業界。本当に創意工夫はできるのでしょうか?私たちにとって一番身近な事例である㈱セントラルユニの変遷を取り上げましょう。
セントラルユニは当メディアの運営元である総合医療設備メーカーです。1950年に北九州市で創業した当社は、ガスの溶断器をはじめとした鉄鋼関連企業としてスタート。鉄を切断・研磨する際に使用する酸素やアセチレンといった高圧ガスを制御する技術を医療用(医療ガス)に転用し、1960年代、医療業界にシフトしました。医療ガスは、手術室やICU等、病院のあらゆるシーンで使われるライフラインです。1970年代にモジュラー式の手術室を開発し、急性期の高度治療領域の環境をつくる事業へ拡大させました。
こうして2011年、モノづくりに留まらず医療現場で働く人々の仕事(コト)自体をデザインすべく、mashup studioを設立します。事業戦略上のmashup studioの価値について、同社事業開発部の松本部長は、こう話します。
「私たちはモノをつくる側ですが、『つくる側』と『使う側』の一方通行の話ではなく、より良い働き方と環境を共に考える「対話の場」のデザインし、『気づき』と『共創』を生み出すことが重要だと考えます。」
当メディア『HCD-HUB』もまた、事業開発部内のプロジェクトから創生された一つです。「理想の病院(づくり)」を共通の問いに掲げ、ヘルスケアのこれからを考えるあらゆる立場の人がつながる場づくりの活動は、まさにBeyond Borders—。Webメディアを立ち上げて2年間、様々な職種の方々に出会う中で、医療業界の内外から見える景色の境界を行き来してきました。
そして、理想の病院づくりを阻む「落とし穴」が見えてきた私たちは、それらを乗り越えるために、今日も活動を続けています(現在では大学教員や医学部・看護学部の学生さんも交えて編集会議やフィールドワークを展開)。
全国各地から集う人の中には、当日の朝まで看取りを行っていた看護師の方もいれば、翌日の早朝から当直を控える医師の方もいらっしゃいました。現場に身を置く個々人と足並みを揃えながら、HCD-HUBは創意工夫を促す一助になれるのでしょうか? いつか必ず、そうして参りたいと思います。
※ 特定の社会問題を解決するための共通のアジェンダに対して、異なるセクターのアクターのグループが、構造化された協力形態を使用してコミットメントすること。