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コト2020.07.29

Children's Hospital New Orleans ベンジャミン・ウィットワース氏「老朽化した小児病院を現代のニーズに合わせてアップデート」

「Designing for the Future: The Benefits of  Modernization」は、老朽化した築30年のニューオリンズ小児病院を、どう現代のニーズに合うように増改築したかを説明するセッションです。

登壇したのは、同病院のオペレーション担当ベンジャミン・ウィットワース氏、設計事務所EYPのデビッド・デイズ氏、建設を担当したレモワン社のウィリス・ホーバー氏です。

ニューオリンズ小児病院は、この地域で小児麻痺が流行した1955年にその治療にあたる専門病院として創設されました。その後70年代に小児科の一般病院になり、80年代に拡張されました。

ただ近年では、入口が多すぎてセキュリティー上の懸念がある、スタッフと患者との動線が混じっている、搬入口が患者外来入口と同じであること、駐車場が足りないなど、病院としての問題も目立つようになっていたのが今回の増改築のきっかけでした。数年前に隣接する公園内にある歴史的建造物を買い、それを統合するという課題もありました。

プロジェクト開始にあたって検討されたのは、病院アップデートの方法です。すべてを新築にするか、あるいは一度のフェーズで増築を行うといった選択肢もある中で、最終的には複数のフェーズを経て、外来クリニックと入院病棟の二つの建物を機能的にも統合するというものでした。コストや病院のオペレーションを中断させないことが、その理由です。 結果的には34フェーズからなる建設プロジェクトとなりましたが、非医療関連部門の引っ越しが3件、医療関連部門の引っ越しが1件という、運営上は最低限の中断で済ますことができたと言います。「飛行しながら2つのエンジンを取り替えるような」難しい挑戦だった、と建築家のデイズ氏は語りました。

設計にあたって、まず病院の機能を整理しました。事務関連の機能は新たに買い入れた歴史的建造物に移行させました。そこにはまた行動保健部門も併設しています。歴史的建造物ではありますが、内部は改築によって現代風にアップデートされています。

その上で、外来クリニックと入院病棟双方の近い位置に駐車場を新設し、病院へやってくる人々への便宜を図りました。駐車場から入院病棟につながるブリッジ部分には吹き抜けのパビリオンが設けられ、比較的早い時期に利用が開始されました。この部分は、病院関係者に「ゴージャスだ」と歓迎されただけでなく、これから続く増改築への印象をよくしたそうです。

入院病棟と外来クリニックを結ぶラインは、病院のエネルギー線とみなし、すべてはそれにそって解決されていきますが、機能の配置には苦心しました。川に面した側の工事も、許認可が厳しかったと言います。

最終的な竣工は2021年に予定されていますが、すでに旧病院と現病院との大きな違いが見て取れます。外来クリニック、入院病棟をつなぎ、向かいの公園に建つ歴史的建造物にも面した入口付近のアトリウムは、これから建設されるものですが、この小児病院の中心であることがすぐにわかり、内部も広々と開放的な作りになっています。古い建物を利用しながらこの部分を付加したことは、病院が刷新されたイメージを強化するのに大きく貢献するはずです。 内部では、斬新なサイン計画も導入されました。これはすべてを一度に表示するのではなく、進むに従って徐々に行き先のサインが細かくなっていくというタイプのもので、訪れる人に親切な手法と言えます。

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